本場ボルドー仕込み ワイン研究家 金子三郎氏 |
- シャトー訪問記(その1) - ![]() シャトー・ド・サル |
今まで大分横道にそれてしまいましたので、久し振りに本来のワインの話に戻ります。 私はボルドー滞在中に、フランスの殆どのワイン産地を訪ねることができました。その中で印象に残ったいくつかの葡萄園についてこれから述べてみようと思います。 先ずは、ボルドーのポムロール地区にある<シャトー・ド・サル(Château de Sales)>からはじめてみます。ポムロール地区はドルドーニュ河の右岸にあり、偉大な赤ワインの産地としてはボルドーで最も小さい地区ですが、《ボルドー便り》vol.41でも触れましたシャトー・ペトリュスをはじめ大変高価ではあるが、心を浮き立たせるようなすばらしいワインをたくさん産みだしております。ポムロールは一般に平坦地で、広い葡萄畑の中にぽつんぽつんと田舎家風の小さな建物の集落がかたまっているだけで中核となる町もなく、メドックにあるような豪壮なシャトーは殆ど見当た ![]() 実は、このシャトーを訪問するきっかけは、《ボルドー便り》にも登場しましたフランス貴族のde Mさんにご紹介をいただきました。de Mさんの妹さんの友人であるマルセイユの貴族のご婦人が<シャトー・ド・サル>の現オーナーのブルノ・ド・ランベール氏の姉上様にあたり、そのお方がシャトーを訪ねられますのでご一緒にいかがですかとのうれしい便りが届いたのです。勿論、是非訪問したいとお願いいたしました。その後オーナーのド・ランベール氏から何度か連絡をいただきました。ご親切にも最寄りのリブルヌ駅まで迎えにあがりますとまで言ってくださいましたが、当日はボルドー大学の若き哲学研究者と彼の友人のフランス貴族を研究テーマにしている女性を伴って、タクシーで訪ねることにしました。シャトーへ到着しますとオーナーご自身とマルセイユのご婦人が、冬の寒空の中をシャトーの前でお待ちになって出迎えてくださいました。そして偶々パリからお越しになっておられたド・ランベール氏のもう一人のお姉様も加わって、とても温かい歓迎を受け感激してしまいました。 先ずは、シャトーの由緒ある「迎賓の間」にご案内いただきました。天 ![]() ![]() さあ、いよいよこれからオーナー直々に、醸造室やシェ(貯蔵庫)をご案内いただきます。冬のシャトーの中はとても冷え込みますが、お二人のご婦人もずっとつきっきりでお付き合いくださいました。今では完全にコンピュータ化された近代設備の整った醸造室になっていますが、一昔前までは温度を心配して冬の深夜に起きては何度も見回りに行ったものですと、オーナーは懐かしそうに語っておられました。私は<シャトー・ド・サル>を訪れる前にこのシャトーについていろいろ勉強していったのですが、質問するまでもなくオーナーからの懇切丁寧 ![]() ![]() この部屋にはシャトーの有する5つの土壌の種類の状態が標本展示されており、当時醸造学部の授業でちょうど習っているところでしたので、オーナーからの説明は大変興味深くよい勉強になったことを懐かしく思い出します。 オーナーのド・ランベール氏と二人のご婦人とご一緒に語り合いながら、ゆったりとした時が流れていきました。いつもの型どおりの試飲とは一味も二味も違った雰囲気の中で大変幸せなひと時でした。ド・ランベール氏をはじめ二人のご婦人は恐らくどんな人と語り合っても和ませる、貴婦人だけのもつあの微笑ましい寛大さを感じました。私たちは上流階級のフランス人のさりげない教養溢れる会話にすっかり魅了されてしまいました。フランスの貴族社会を研究テーマに ![]() 私たち一人一人にシャトーの紋章の入った木箱入りの<シャトー・ド・サル2001年>のお土産までくださいました。長時間に亘ってつきっきりでご懇切なるご案内を賜りましたことに感謝しつつシャトーをあとにしました。帰りはマルセイユとパリのご婦人がそれぞれ運転する2台の車でリブルヌ駅まで送っていただきました。最後まで至れり尽くせりの歓待を受け、誠に思い出に残る楽しいシャトー訪問となりました。 <シャトー・ド・サル>のオーナーのド・ランベール氏からは毎年美しいクリスマス・カードが届きます。 |
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