ボルドー便り vol.3


 − ボルドー(Bordeaux)−


  パリ・モンパルナス駅からボルドー・サン・ジャン駅までは、フランスが世界に誇るTGV(超高速列車)で直行すれば約3時間、シャルル・ド・ゴール空港駅からですと約4時間かかります。飛行機ならシャルル・ド・ゴール空港から1時間ちょっとで、ボルドー近郊のメリニャック空港に着きますが、それから市内までは30分ほどバスに乗ります。わたしは緑の牧草地、ぶどう畑、山頂の古城など、車窓に流れる景色を眺めながらの旅が好きでもっぱらTGVを利用していました。
  ボルドー(Bordeaux)といえばまず思い出されるのがボルドー・ワインでありましょう。
  この町はフランスの南西部に位置し、ガロンヌ河に沿う、古くから開けた都市で、ジロンド県の県庁所在地であり、人口約75万人を擁しフランスの都市の中では7番目にあたります。また、フランス最大のアキテーヌ地方の中心都市でもあります。
  ボルドー市内は18世紀に建てられた荘厳な石造りの建築物が並び、一歩路地に入り込むともうそこは石畳のある中世の世界に飛び込んだ感じがしてきます。周辺にはワインの産地を控え、南部にはヨーロッパ最大の森林地帯が広がります。
  歴史的には英仏100年戦争(1337年―1453年)の拠点として有名ですが、ボルドーは常に従順で穏健な地方都市とはならず、しばしば中央権力に対する反乱の砦と化していきます。フランス革命期には、ジャコバン派政権に対抗するジロンド派の拠点になり、連邦主義反乱に参加するのです。
  またボルドーは3つのMを生み出した都市であることを誇りにしています。作家であり、モラリスト、政治家であったモンテーニュ(de Montaigne,1533―1592)の賢明さと、啓蒙思想家であり、歴史家であったモンテスキュー(de Montesquieu,1689―1755)の厳格さとは、現代のボルドーの精神を、何よりも根底からより深く印象づけております。それに加えてカトリック作家のモーリアク(Mauriac,1885―1970)、この三人の偉人が即ち3つのMです。
そして、ボルドー市は1982年に福岡市と姉妹都市の締結をしたことでも知られております。
  と、こんな旅行ガイド的口上を述べたててみたところで、しょせん、ほとんどの日本人の意識のなかではパリの比重が圧倒的に大きくて、ワインで有名なぐらいしかボルドーをご存知ないかもしれません。有名な「エセー(随想録)」を書いたモンテーニュ、そして「法の精神」の著者がモンテスキューであることはご存知でも、この二人の偉人がボルドー出身であることはご存知ないのではないでしょうか。かくいうわたしも知りませんでした。ましてやモーリアクは文学部出身でもなければ知らないでしょう。ほとんどの日本人がボルドーはいったいフランスのどこに位置しているのかも分らないのが実情ですから、無理もありません。
  「ボルドーはあまりにも遠し」です、か。